「自転車が本当に必要だとわかったのは、諦めようとしてからだったと思う。自転車に乗らないと、生きている感じがしない。祖父さんは思い込みだと言うけれど、ぼくには実感なんだ。生きている気がしないのに生きているのは辛いよ」

  中3から高校にかけて、自転車ロードレースにかける少年たちを活写する本シリーズ。時に助け合い、競い合いながら、各々「自分」を探し続ける彼らの姿は、世代を問わず胸を打つはずです。フォルツァ!
 
  自転車好きの中学生・溝口洋は、峠道でたまたま出会った実業団チームのジュニアクラブに誘われ、練習生になる。しかし、選手の選考法などに疑問を持ちクラブを離脱。いったんは自転車から離れようとするが諦められず、唯一の肉親で洋が自転車へ乗ることに反対し続ける祖父に、レースへの出場を直訴した――。




  「そんなこと気にしてたの? 藤島くんは藤島くんだし、坂城くんには坂城くんの走りがあるでしょ。他人とか、あんまり関係ないと思うけど」

  沙由美と亮平が初めて言葉を交わしたときの回想シーン。全国レベルの実力を持つ陸上部のエースと自分を引き比べ入部をためらう亮平に、沙由美からガツンとひと言。思わず背筋が伸びます。

  高校時代、一学年上の乾沙由美に惹かれて陸上部に入部した坂城亮平。のちに沙由美と結婚し幸福を手にしたと思われたが、彼女は病に倒れ、やがて命を落としてしまう。茫然自失となり酒に溺れる亮平は、再び走り出すことができるのだろうか?
 
   生きてることへの疑問は、なにひとつ解決していない。いままではともかくとしても、はたして、これからどうなっていくのか。
 結論なんてものは、なにも出ない、まだ。あるいは、いつになったって。
 でも、サッカーしてたいよね。ぶっ倒れるまで。

  愛生園チームのイレブンは皆、ひと癖もふた癖もある連中ばかり。決して「快進撃」とはいかなかったけれど、なんとなく結束は固まったし、悪くない感じ。心の底から好きなものがあれば、なんとかなるさ!

  複雑な家庭環境に育ち、養護施設・愛生園に入ることとなった双子の中学生、宮本兄弟。お互いを「A」「B」と呼び合いながら、シニカルに世の中を渡っていく。でも、小学校からやっているサッカーだけは本気。寄せ集めの愛生園チームで参加する地区対抗戦では、優勝を狙い、秘策を用意していた。

「ロード」あさのあつこ

「サッカーしてたい」川島誠
  「みっともなくてもガンバレ。照れ隠しをしているよりその方がずっといいよ。陸らしい」
「褒めてるのか?」
「不器用だと言っているだけ」
 たしかに器用ではない。でも、不器用も悪くはない。

  お互いの心の中にあったわだかまりをぶつけ合った後――自信なさげな練習ぶり見たことがある香織から、陸への励ましの言葉。陸は「これがおれのスタイルだ」と言える走りをしようと決意します!

  高2の霜嶺陸は、南雲デンキ自転車部ジュニアクラブに所属している。まだ中3なのに「翼を持つ」天才の南雲真一に引け目を感じているところへ、コーチからキャプテン就任を要請され、とまどう。さらに、昔「わけあり」だったはとこ・・・の秋谷香織が、母親と一緒に転がり込んできて……。
 
   いくつもの矢を身体に受け、針鼠のようになりながらも倒れない。仁王立ちし、不敵に笑う豪傑。そのカッコよさといったら!
鎧をまとう豪傑に、恭司は氷上での自分の姿を重ねた。矢はゴール目掛けて放たれるパックだ。矢が自分に刺さればゴーリーの勝ちだ。

  中学時代、中国歴史漫画の豪傑のようになりたくて、アイスホッケーでは絶対的な存在のゴーリーというポジションを選んだ恭司。彼のように初心を忘れなければ、心が簡単に折れたりはしません!

  日本アイスホッケーリーグでゴールキーパーとして活躍する後藤恭司。1年前、不慮の事故を契機に、今日の試合の相手チームを追われたのだった。恭司は今、強気な恋人への感謝、10年来音信不通だった父親からの「傲慢になれ」という手紙に対する葛藤など、さまざまな想いを胸にリンクに立つ――。

「風を運ぶ人」川西蘭

「氷傑」須藤靖貴
  「脚力や走力で劣るのは仕方がない。スポーツって、何でもそうだろう。素質がある者とない者の差は、歴然としている。それを努力で埋めることは、ほとんど不可能に近い。
 だけど、心は違う。最後まで諦めないことは、気持ちさえあれば誰にでもできる。あたしは諦めたくなかった。」

  バトンをつなぐということは、勝利を願い相手に想いを託すのと同じこと。恋も陸上も、きっちりけりをつけるために全力で走る恭子。その先の言いようのないくらいの快感をいっしょに感じてください。

  これは主人公の18歳女子高生・恭子のセリフ。陸上部のチームメイトの昭一と付き合っている恭子。だが、昭一から、地区大会出場メンバーの優を好きになってしまい、優と付き合いはじめたと知らされて……。目標を失い、練習にも顔をださなくなる恭子。恋と地区大会は、一体どうなる?
 
   スケートも、恋も、何もかもあきらめてしまって、いいの?
 流のことを、忘れないでいるためにも、つづけてみる? 大好きな純子さんのためにも? でも、流以外の人と組むなんて、考えられない。だったら、やめる? やっぱりやめる? やめるしか、ない? わからない。わからない。どうすればいいのか、わからない。

  かなわぬ「初恋」に心乱され、人生の分岐点に立つ少女の繊細な心情が伝わってきます。悩んで悩んで悩みぬいて、その末に自分で決断することこそが大事なんだと思います。

  中3のときからずっと指導を受けてきたコーチに慰留されながら、フィギュアに別れを告げようとしている佐藤可南子。その理由は、ペアを組んでいた渡良瀬流との恋が座礁したから。とりあえず結論を保留し、姉が留学しているアメリカに向かった可南子は、はたして、どのような結論を出すのか……。

「バトン」五十嵐貴久

「ガラスの靴を脱いで」小手鞠るい


  「折原が代表に行けばいいことです。あいつは、強いです。代表決定戦で僕が負けたら、それは僕が弱かったってことでいいんです」

  河内が「噂」を立てられたのは、練習中に不可思議な行動が見られたから。しかし彼には、そうせざるをえない理由があったのです。その理由を公言することを潔しとしなかった心の強さに、しびれます。

  赤星中内で対立する文化部と運動部――その仲をとりもち「平和をもたらす者(ピースメーカー)」とも呼ばれる放送部の良平とケンちゃん。彼らが今回挑むのは、剣道部の「二大剣士」と呼ばれる二人のエース、折原と河内に関する八百長の噂だった。河内が、個人戦の代表を折原に譲ろうとしているというのだが……。
 
   リョウちゃんは、高校のときにバスケットボールで全国大会に出場した。それがインターハイだって教わった。
 バスケットボールっていうのもよかったけれど、インターハイってのは、もっと素晴らしく聞こえた。ガキの俺の耳には。
 親父の言う天国なんかよりは、はるかにインターハイ。俺も行ってみたいって思った。

  中学生の主人公によって回顧される、小学生時代のグロリアスデイズ。しかしこれが、あっけらかんとした語り口で語られているのがミソ。「苛酷な状況でもへこたれない」したたかさに、勇気を与えられます。

  今は養護施設で「顔」になっている浅田。しかし彼にも、親と一緒に過ごしていた時代があった。そこで彼が初めて出合ったスポーツがバスケ。父親と同じ建設現場で働く飄々とした若者「リョウちゃん」に教わった。バスケは、浅田にとって、リョウちゃんと同様に輝いて見えた。

「peacemaker サウンド・オブ・サイレンス」
小路幸也

「内緒だよ」川島誠
  「前の年の成績で強さの順番が決まるんだ。おれのチームは八位。一位のチームと試合するんだよ。だから強い弱いって自動的に思っちゃうんだね。でも優毅君の言うとおりだ。最初から認めちゃダメだよね。試合中に負けそうになったら、やっぱり弱いからだって思っちゃうかもしれないもんな」

  優毅の何気ないひと言を耳にした真佐夫は、自分を信じることの大切さを再確認します。アップセット――逆転。不利な形勢を逆転するには、弱気になっていてはダメなんですね。

  大学のアメフト部に所属する真佐夫は、社会福祉学部の3年生。実習の一環で、児童相談所を手伝っている。ある日、 攻撃的な行動でクラスから浮いてしまった小学生の優毅をケアすることに。野球のキャッチボールを通じて優毅の心を開こうとする真佐夫だったが……。
 
   こんなことでレースを断念したくない。このレースが最後のレースなのに、みんなで作ってきたおれたちのレースなのに……。
 真一は息を吸い込み、空を見上げた。
 透き通った秋の青空。白い雲が山の端を流れていく。
 やめなければいい。
 ふと思いついた。急に心が軽くなった。
 やめなければ、レースは終わらない。

  チーム内で競い合ってきた今泉昇や、自分と違って泥臭い勝負もできる現キャプテンの溝口洋らと並走した最後のレースで、天才肌の真一が自分の中に新たな一面を発見する瞬間が爽快です。

  自らの祖父と縁の深いロードレース大会が中止になりそうだと聞き、南雲学院高校自転車部の前キャプテン・南雲真一は、仲間たちと一緒に手作りで大会開催にこぎつける。大学受験を控える真一にとって、最後の自転車レース。完走で終えたい――そう強く願った。

「アップセット」須藤靖貴

「ワンデイレース」川西蘭
   ぼ、ぼ、僕は、こ、恋を、して、いるのです――。
 いえるかァ、そんなこと。
 でも俺の頭ん中は、完全に彼女一色になっていた。
 俺の脳内というせまいリンクの中で、しかし彼女は一人で伸び伸びと、楽しそうに、いつまでも滑っていた。

  何の取り柄もない小学生男子の、純情な初恋。それは年々心の中に降り積もって……。スケート人生を歩み、苦しむ彼女に彼が精一杯の力でしたこととは? 夕奈の渾身の4回転ジャンプに声援をお願いします。

  妹のつきそいから通いはじめたスケート教室で、小4男子の主人公が出会ったのは、スケートで世界を目指す同じ年の美少女・夕奈。彼女を見たいがために教室へと通い、いつしかその奮闘する姿にひかれ、はじめて「恋」をした自分に気がつくが……。
 
  苦境の中で懸命に足掻くことの虚しさを、啓は熟知している。自身の体験もある。父の例もある。だというのに、啓の目には最後まで諦めない人馬の姿が輝いて見えた。乾いた心に興奮がほとばしり、冷めた血が熱くたぎった。
諦めたくない。啓は強く思った。挑戦したい。啓は熱く思った。

  夢を掴んだからではなく、夢を諦めない姿こそが尊い。逆境でも最後まで諦めない奈津の姿が啓を奮い立たせたように、奈津を応援したい! という熱い思いが湧き上がってきます。

  怪我が原因で、サッカー選手という幼い頃からの夢を失った啓。そんな啓の前に、廃止寸前の地方競馬場の新人女性騎手、奈津が現れた。ひたむきな奈津の姿に心動かされ、もう一度熱い気持ちを取りもどした啓は――。

「見守ることしかできなくて」誉田哲也

「競馬場のメサイア」松樹剛史


  長い言葉はいらなかった。
「お前を助けに来た」
そんな短い台詞だけで、啓は己の真意を奈津に伝えることができた。

  困難にぶつかった時、隣に誰かがいてくれると心強くなれる。女性騎手として奮闘する奈津を支えるのは、奈津のレースに魅せられ、情熱を取り戻した啓。まだ歩き出したばかりの二人を、最後まで温かく見守ってください。
 
  新人女性騎手の奈津を助けるために厩務員となった啓だが――廃止寸前の競馬場、一筋縄では行かない個性豊かな厩舎街の面々、うまくいかない親子関係。逆風の吹く地方競馬に青春をかける二人の姿にご注目! 「競馬場のメサイア」を基にした長編の連載は10月29日(木)スタートです。


10月29日(木)、連載スタート!

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